菊舎の部屋(作品展示室)


山門を出れば日本ぞ茶摘唄


「六字冠句むつの花」

文化壬申の年報恩講中南無阿弥陀仏の文字を

かしらにをきて発句つかうまつりぬ


琴弾はいつも元日こころかな


あまり咲て薫り忘れな蘭の花


寄るも縁かおなじ流れの華の浪


しらべすみぬ祇園林にのちの月


冬枯は見せぬ手がらや錦帯橋


夏山に雲見て済すよし野かな


香やたかしそつと咲ひても蘭の花


むめが香やふつと寝覚めの窓の風


これもまだ聞ずたつたの水車

からくれなゐをくゝるからうす


よしあしに渡り行世やなみの上


鴉たてば夜は明たりなけふの月


亀井南冥(漢詩)・菊舎(梅画)


散らすちから持つて撓むか雪の竹


見帰れば白雲ふかしきくの山路


三千丈あらひ清めて根白草


むかふかたに金神はなし花の雲


白きくやそめたがる世の中をぬけ


雪に明てもろもろ清し四方のはる


稀な花や冬によし野の餅くばり


こゝろ遊べ天涯比隣冬籠


名にしおふや神の能見て松の月


ながめ高しちらず曇らず月花に


床几から瀬ぶみして見るすゞみかな


思ふ処升る所や初日影


紅葉散るやくれない潜る水車


蘭の香や岩に添ても堅からず


先へ来て手もかけられぬさくら哉


中にへだつ川一すじや雪の朝


折かけて置くも無念のあざみかな


山本左膳宛消息


婚儀の祝い


跡があとへ茂れ柳の老ひ細み


路めぐし千草の花の其中に


ながれ寄る物ははづして柳かな