琵琶朗読劇

 俳句ばかりではなく、たまには違う文化にも触れてみようということで、門司港の三宜楼で行われた琵琶朗読劇を見に行ってきました。これは平家物語を現代語訳したものを琵琶の演奏とともに朗読したものです。朗読は下関市出身の江原千花さん(女優・ダンサー・モデル)、琵琶と謡いは福岡県出身の高木青鳳さん(嶺青流筑前琵琶保存会 教司)です。

 

 三宜楼(さんきろう)は、昭和初期に門司港駅の近くの山側に建てられた木造三階建ての建物です。当時の文化人(出光佐三・古川ロッパ・高浜虚子・杉田久女・佐藤栄作など)が愛した料亭です。二階には百畳間、三階には俳句の間などがあります。現在は下関の春帆楼の経営傘下にあり、日本料理やフグ料理のお店となっています。

 

 琵琶朗読劇のタイトルは、平家物語抄録「波の下の都」です。安徳天皇の母・建礼門院の目線から壇ノ浦の戦いの様子を描いたものです。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり~から始まる謡いと琵琶の悲しげな音色は、やはり味わい深いものがあります。

 

 三宜楼を後にして駐車場へ帰る途中の狭い路地に「放浪記」という喫茶店がありました。コーヒーでもと思って家内と二人で入ってみました。店内は明治・大正・昭和の雰囲気。門司生まれの林芙美子の生きた時代を模したものなのでしょう。雑然とはしていましたが、これもひとつの味わい。森光子の放浪記のポスターが印象的でした。